ACS758 電流センサー IC に関するよくある質問

ACS758 シリーズのさまざまなメンバーにおける違いは何ですか?

違う点は、各バージョンの出力感度 (mV/A) と動作温度範囲です。また、動作温度は最大電流範囲にも関係しています。

ACS758 で使用する CB パッケージと ACS756 シリーズで使用する CA パッケージはどう違いますか?

外面的には、パッケージは同一でフットプリントも同じです。内面的には、CB パッケージのリードフレームの方が、導体がホール効果デバイスを通過する断面積が大きくなっています。その結果、CA パッケージの導体の抵抗が 130 µΩ であるのに対し、CB パッケージはわずか 100 µΩ です。さらに、CB コアは積層鋼で作られていて、CA パッケージのフェライト コアよりもはるかに飽和点が高く (高温に) なっています。

ACS758 シリーズは DC と AC 電流の両方を検出できますか?

できます。ACS758 シリーズはホール効果技術を採用しており、これによって、DC および AC の両コンポーネントをもつ電流を検出できます。データシートによると、ACS758 の帯域幅は標準で 120 kHz です。周波数成分が 120 kHz より大きくなると、AC 電流の出力の位相遅れや振幅減衰が起こる場合があります。過渡電流信号の場合、応答時間は約 4 µ 秒です。

ACS758 は、±200 A と同様に 0 ~ 400 A を検出できますか?

いいえ。ACS758 の検出範囲における最大電流は、電流の絶対値である 200 A です。ACS758 パッケージ内の磁気回路では、200 A で生じる磁界レベルを超えるリニア出力はありません。

「レシオメトリック」とは何ですか?

この機能は、特に ACS758 をアナログ-デジタル コンバータとともに使用する際に役立ちます。通常、A/D コンバータは基準電圧入力から LSB を駆動します。基準電圧が変動すると、それに比例して LSB が変動します。ACS758 のレシオメトリック機能とは、そのゲインとオフセットが電源電圧 VCC に比例しているという意味です。ACS758 の基準電圧と電源電圧を同じ電源から得る場合、ACS758 および A/D コンバータは両方ともその電圧の変動を追跡します。また、このような変動は、ACS758 出力のアナログ-デジタル変換において誤差の原因にはなりません。図 1 は、VCC を変化させた場合の ACS758-100A の一次電流 IP と出力電圧 VOUT を比較したプロットです。オフセットと感度レベルは、VCC に比例して変化します。たとえば、VCC = 5.5 V の場合、0 A 出力は 5.5 / 2 = 2.75 V (公称) となり、感度は 22 mV/A (公称) になります。

一次電流対出力電圧 

図 1. 多様な VCC での ACS758-100A VOUT と IP の比較

どのような外部コンポーネントが必要ですか?

Allegro では、VCC ピンと GND ピンの間で 0.1 µF バイパス コンデンサを使用することをお勧めします。コンデンサは、できる限り ACS758 パッケージ本体の近くに配置してください。

ACS758 のゲインを調整する方法はありますか?

いいえ。ACS758 の感度および 0 アンペア (静止時) 電圧レベルは工場でプログラミングされています。

どのくらい電流が小さければ、ACS758 で分解できますか?

電流センサー IC の ACS758 シリーズの電流分解能は、デバイス出力信号のノイズ フロアによって制限されています。たとえば、ACS758-050 バージョンでは、一次導体リードを介して 25°C で約 250 mA の電流レベルでの変化を分解できます。200 A バージョンでは、約 380 mA を分解できます。これらのレベルで、リニア ホール効果 IC に結合される磁界の量は、ノイズ フロアを少し超えます。低い帯域幅が必要な用途に対して ACS758 の出力をフィルタリングすることにより、分解能を大幅に向上させることができます。さまざまな帯域幅でのノイズ レベルと電流分解能を表 1 に示します。フィルタリングは、シンプルな最初の RC フィルタを使用して実行しました。図 2 ~ 5 の関連グラフでは、フィルタリングで達成できるデバイス出力分解能についてわかりやすく図説しています。

表 1. ACS758 ノイズ レベルと電流分解能対帯域幅

デバイス 帯域幅 -3 dB
(kHz)
ノイズ
(mVp-p)
電流分解能
(mA) (% /フルスケール)
ACS758-200B 120 3.84 384 0.192
10 0.92 92 0.046
1 0.55 55 0.028
0.2 0.15 15 0.008
ACS758-150B 120 4.36 328 0.219
10 1.08 81 0.046
1 0.52 39 0.026
0.2 0.16 12 0.008
ACS758-100B 120 5.69 285 0.285
10 1.49 75 0.075
1 0.67 34 0.034
0.2 0.22 11 0.011
ACS758-50B 120 10.03 251 0.502
10 2.95 74 0.148
1 1.05 26 0.053
0.2 0.43 11 0.022


ノイズおよび電流分解能
図 2A
ノイズおよび電流分解能
図 2B
ノイズおよび電流分解能
図 3A
ノイズおよび電流分解能
図 3B
ノイズおよび電流分解能
図 4A
ノイズおよび電流分解能
図 4B
ノイズおよび電流分解能
図 5A
ノイズおよび電流分解能
図 5B

ACS758 の ESD 耐性はどうなっていますか?

ESD 耐性の標準値は 6 kV (人体モデル)、600 V (マシン モデル) です。

ACS758 を表面実装できるように、パッケージの下または外側へリードを曲げることはできますか?

200 A の電流を安全に導電するために、ACS758 の電源のリードフレームは比較的重いゲージで構成されています。この重いゲージのため、端子のリードはあまり柔軟ではありません。表面実装されている、基板に柔軟性があまりない、または長期にわたり熱膨張や熱収縮が行われる ACS758 の場合は、IC が基板から折れる可能性があります。このデバイスには表面実装部品はお勧めしません。

ACS758 を基板にはんだ付けするにはどうしたらよいですか?

基板にしっかりと接合するには、検出した電流が流れる 2 つの各基板の一次導体リードにあるはんだパッド領域にスルーホールのリングを追加することをお勧めします。これらのホールを図 6 に示します。CA および CB パッケージの一般的なはんだ付けに関する推奨事項は、アプリケーション ノート "Allegro 製品のはんだ付け方法 (SMD とスルーホール)" に記載されています。

直線型リードのパッケージ構成に接続するにはどうしたらよいですか?

錫結合溶接技術をお勧めします。この方法については、アプリケーション ノート "ホール効果デバイスを使用したサブアセンブリ設計のガイドライン" で説明しています。

ACS758 (CB パッケージ) について推奨される設置面積はありますか?

PFF リードフォーム構成に推奨される設置面積は図 6 に記載されています。A の部分にある信号ピン用の 3 つの小さなスルーホールも、–PSF 構成 (直線型一次導体リードを持つ) に適用されます。

 

 

レイアウト
図 6. ACS758 PFF 構成の推奨 PCB レイアウト

評価ボードのガーバー ファイルを入手できますか?

次からダウンロードしてください。Allegro_CA_CB_EvalBoard (ZIP)

ガーバー ファイルを使用できないのですが、他に使用できるフォーマットはありますか?

AutoCAD 2004 .DXF ファイルは次からダウンロードできます。 Allegro_CA_CB_EvalBoardDXF (ZIP)

これらのファイルでは、銅のエリアを "地域" と定義しています。

評価ボードの銅配線の厚みはどのくらいですか?

評価ボードには、4 オンスの銅が使用されています。

部品が発熱していることはどうしたらわかりますか? また、ダイの温度はどうしたら測定できますか?

一次電流経路端子の温度を使用すると、パッケージ内部のダイの温度を推定できます。図 7 を見てわかるように、パッケージのケース付近の一次電流経路端子の側面の温度は、パッケージ内の一次電流経路ブリッジの温度とほぼ同じです。パッケージ内のダイの温度は、これより約 1°C 低くなります。パッケージ内の温度を測定するには、図 8 で示す場所のいずれかに熱電対をはんだ付けします。次に、1°C を引くとダイの温度をかなり正確に推測できます。ダイの温度は、使用されている ACS758 バージョンのデータシートで指定された範囲内にする必要があります。

温度勾配  温度試験点 

図 7. 一次電流経路の温度プロファイル

図 8. 熱電対の場所を示す ACS758 パッケージの上面図

ACS758 を適用する設計ガイドラインは他にありますか?

計測する電流経路のインダクタンスを最低限に抑えるには、注意が必要です。また、一次経路のすべての接続の接点/接続抵抗を最小限に抑えることにも注意を払う必要があります。

ACS758 (CB パッケージ) のインダクタンスはどうなっていますか?

代表的なインダクタンスの測定値とテスト信号の周波数は、次のとおりです。

  • 32 nH (10 kHz)
  • 24 nH (100 kHz)
  • 21 nH (200 kHz)

ACS758 に鉛 (Pb) は含まれていますか?

ACS758 シリーズは鉛フリーです。信号用ピンと端子はすべて 100% 曇り錫でめっき加工され、パッケージ内は鉛フリーです。

高電流リードフレームは何で作られていますか?

ヘビー ゲージ リードフレームは無酸素銅で作られています。

ACS758 は漂遊磁界の影響をどのくらい受けやすいですか?

ACS758 には、IP により生じるフラックス ラインの集線装置としてだけでなく、周囲のコモンモード フィールド (コモンモード フィールド除去の代表値は –41 dB) からホール回路の IC を保護するためのシールドとして働く集線装置コアが含まれています。保護されていないリニア ホール効果センサー IC と ACS758 の出力電圧 VOUT を比較した結果については、図 7 で説明しています。デバイスのゲインは同じで、パッケージ上部の空芯に適用される同じ磁場にさらされています。

磁気応力 

図 7. 漂遊磁界における ACS758 の性能

ACS758 にはどのような安全性認定がありますか?

ACS758 シリーズは、Underwriters Laboratories により次の規格の認証を受けています。

  • IEC 60950-1:2001、初版

また、ACS758 シリーズは、TÜV America により次の規格の認証も受けています。

  • UL 60950-1:2003
  • EN 60950-1:2001
  • CAN/CSA C22.2 No. 60950-1:2003

成形材料は、UL94V-0 で UL 認証を受けています。

VCC の起動速度が遅い場合に ACS758 出力の動作はどうなりますか?

図 8 では、0 A と 50 A の両方の場合について、VCC の起動速度が 500 m 秒のときの ACS758xCB-050 の通常出力動作を示しています。

磁気漂遊 

図 8A.ACS758 電源投入時の性能。VCC の起動 (IP = 0 A
5 V/500 m 秒のスルーレート、C1:VCC = 2 V/div.、C2:VOUT = 2 V/div.、時間 = 50.0 m 秒/div.



磁気漂遊 

図 8B.ACS758 電源投入時の性能。VCC の起動 (IP = 50 A
5 V/500 m 秒のスルーレート、C1:VCC = 2 V/div.、C2:VOUT = 2 V/div.、時間 = 50.0 m 秒/div.

電源の供給が有効になってから ACS758 の信号が有効になるまでに、どのくらいの時間がかかりますか?

出力が有効になるまでの標準時間を表 2 と図 9 に示します。ただし、プロセスや温度範囲によって電源投入時間が変動する場合には、3 ~ 5 倍の安全範囲を確保することをお勧めします。

表 2. ACS758 の有効出力までの所要時間
   (VCC = 5 V で測定)

IP (A) 0 50
電源投入時間 (µ秒) 8 10


磁気漂遊 

図 9A.0 A 投入で ACS758-50A を起動し、0 ~ 5 V の VCC ステップ
5 V/500 m 秒のスルー レート、C1:VCC = 2 V/div.、C2:VOUT = 2 V/div.、時間 = 10 µ 秒/div.



磁気漂遊 

図 9B.50 A 投入で ACS758-50A を起動し、0 ~ 5 V の VCC ステップ
5 V/500 m 秒のスルー レート、C1:VCC = 2 V/div.、C2:VOUT = 2 V/div.、時間 = 10 µ 秒/div.

センサー IC の出力を指定最大キャパシタンスの 10 nF を超える値で駆動させたらどうなりますか?

センサー IC の出力が変動する可能性があります。

センサー IC の出力を指定最小抵抗の 4.7 kΩ 未満の値で駆動させたらどうなりますか?

出力ドライバで十分な電流を供給できなくなるため、センサー IC は出力を生成できません。

ACS758 デバイスの過電流耐性はどうなっていますか?

100 µΩ という低い内部抵抗のため、ACS758 センサー IC の CB パッケージの過電流機能は、母線または搭載されているプリント基板の特性に大いに依存しています。PCB を取り付ける際、トレースの幅と厚み、レイヤーの数、接地と電源プレーンの有無、電流を基板に流したり止めたりするケーブルのゲージはすべて重要な要素です。また、用途の最大動作温度と持続期間、デューティ サイクル、過電流発生時の電流パルスの数によって異なります。例として、2 AWG ケーブルを使用して電流源に接続されている、Allegro ACS758 評価ボードの ACS758 デバイスを特徴付けてみました。これは、4オンスの銅を使用した 2 層ボードです (図およびガーバー ファイルについては、このページの FAQ をご覧ください)。

結果を表 3 に示します。

表 3. テストした最大 ACS758 過電流レベルと持続時間
   (2 AWG ケーブルで接続された Allegro ASEK 758 評価ボードのデバイスに適用)

周辺温度
(°C)
最大電流
(A)
10 秒、10% のデューティ サイクル、100 回のパルス適用 
25 350
85 350
150 260
3 秒、3% のデューティ サイクル、100 回のパルス適用 
25 450
85 425
150 375
1 秒、1% のデューティ サイクル、100 回のパルス適用 
25 1200
85 900
150 600


ACS758 の電流経路とホール エレメントの容量結合は、センサー IC の出力にどのように影響しますか?

リードフレーム ノイズ除去試験は、高周波数の正弦波周波数を高電流リードに注入することによって行われます。こうして、ホール効果デバイスの出力への信号結合が測定されます。表 4 に示されているように、ACS758 シリーズのデバイスでは、リードフレームのノイズを高いレベルで除去できることがわかります。また、図 10 のチャートは、周波数の機能としての性能を示しています。

表 4. 電流経路の 20 V ピーク間信号の標準的な容量結合

f (MHz) 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 7.5 8.5 10.0 15.0 18.0 20.0
VOUT(p-p) (mV) 15.0 50.0 100.0 200.0 250.0 700.0 750.0 1000.0 1020.0 1050.0 600.0
ノイズ除去 (dB) -62.5 -52.0 -46.0 -40.0 -38.1 -29.1 -28.5 -26.0 -25.8 -25.6 -30.5


磁気漂遊 

図 10. ACS758-50A のノイズ除去と周波数の比較